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Saturday, October 16, 2021

社説:分配重視の経済 地に足の着いた議論を - 京都新聞

kuyupkali.blogspot.com

 国際通貨基金(IMF)が今週、世界経済の見通しを下方修正した。2021年の実質成長率は、世界全体で7月時点の予測より0・1ポイント減の5・9%とされた。

 日本はさらに下振れして、0・4ポイント減の2・4%になる、としている。新型コロナウイルス感染の「第5波」によって経済活動が制限されたことが、影響したようだ。各国と比べて経済の回復が遅れ、立て直しが急務となっている。

 安倍晋三政権以来、経済政策の基本は、「アベノミクス」であった。大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略の「三本の矢」をもって、成長と分配の好循環をもたらそうとした。

 円高を是正して株高を呼び、企業業績を回復させた。雇用状況も以前と比べて改善した。

 その半面、企業の内部留保に当たる利益剰余金は昨年度、484兆円余りとなって、9年連続で過去最高額を更新した。

 アベノミクスの恩恵を受けた大企業や富裕層から、成長の果実が低所得層にも回ってくる「トリクルダウン」は起きなかった、との指摘を裏付けている。

 コロナ禍への対策に加え、日本経済の新たな方向性を示すべき局面ではないか。

 岸田文雄首相は、富の分配をより重視する「新しい資本主義」を唱え、分厚い中間層の再構築を目指すという。賃上げに積極的な企業を、税制面で支援する施策などを掲げている。

 ただ、自民党総裁選で主張した富裕層の取り分を減らす金融所得課税の見直しは、党の公約としなかった。分配重視の姿勢が、後退したようにみえる。

 立憲民主党などの野党も、低所得層への給付や所得税の減免などの分配策によって消費を増やし、成長を促すとする。財源については、超大企業や富裕層への課税を強化すると明言した。

 消費税を、時限的に引き下げたり、廃止したりすることにも言及している。だがこれは、増え続ける社会保障費の財源を失うことにもなりかねない。

 こうした政策論争について、財務省の事務方トップが「ばらまき合戦のようだ。国庫には無尽蔵にお金があるかのような話ばかり」と異例の批判をした。経済界からも「ほぼ100パーセント賛成だ」との声が上がる。

 有権者は、現実的な判断をしたいはずだ。与野党には、地に足の着いた議論を求めたい。

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