[27日 ロイター] - 中国では、政府が環境政策を重視する影響で深刻な電力不足が起きている。一部地域で重工産業が低迷し、中国の経済成長に悪影響が及ぶとアナリストは指摘する。
中国は、二酸化炭素(CO2)の排出量を2030年までに減少に転じさせ、60年までに実質ゼロにする目標を掲げる。この目標達成に向け、2021年のエネルギー強度(一定の国内総生産を創出するのに必要なエネルギー量)を3%削減する目標を設定したが、今年前半に目標を達成したのは30の省・地域のうち10省・地域にとどまった。このため地方政府は最近、CO2排出削減措置を強化している。
中国の電源構成は石炭火力の比率が圧倒的に大きい。しかし石炭の価格上昇や供給減少で、暖房需要が高まる冬を前に電力不足に陥っている。
モルガン・スタンレーは27日付の顧客向けノートで「パンデミックのなかの工業ブームと環境規制の再設定がぶつかり合っていることが電力削減の背景」と指摘。「生産削減が長引けば、第4・四半期の国内総生産(GDP)伸び率を1%ポイント押し下げる可能性がある」との見方を示した。
中国経済は、昨年の新型コロナウイルスのパンデミックから急回復を遂げたが最近は息切れの兆候がみられる。
鉄鋼・アルミニウム・セメント産業には生産抑制措置が取られ、モルガン・スタンレーによると、アルミ生産能力の約7%が停止、セメントは生産の29%相当の影響が出ている。
野村は24日付の調査ノートで「世界2位の経済大国であり、世界の工場(である中国)での電力供給ショックは世界の市場に影響を及ぼすことになる」とし「供給ショックを受け、当社は第3・四半期と第4・四半期のGDP伸び率予想をそれぞれ4.7%、3.0%とし、従来予想の5.1%と4.4%から引き下げた」と述べた。
野村は2021年の成長率予想を8.2%から7.7%に下方修正した。中国政府の目標は6%以上。
ある中国駐在アナリストは「電力削減の主な理由は、石炭供給不足だ」と述べ、国内の石炭生産が安全基準の強化で抑制されていることや、インドネシアからの輸入が天候不良で減少していると指摘した。
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