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Sunday, July 25, 2021

[スキャナー]半導体不足 打撃広がる…「偽物」急増・車や家電 減産 : 経済 : ニュース - 読売新聞

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 世界的な半導体不足が深刻化している。自動車業界は減産や新型車発売の延期に追い込まれ、家電、パソコン、通信機器など幅広い製品に波及し始めた。その焦りにつけ込むかのように、半導体の「偽ブランド品」まで出回る事態となっている。

 (経済部 中島千尋、中西瑛)

 「この製品を信頼しても大丈夫か」

 先月上旬から半導体の真がん判定サービスを始めた沖エンジニアリング(東京都練馬区)には、電機メーカーなどから毎月、最大で数千個の半導体製品が持ち込まれる。検査員は、1ミリ~3センチ四方の半導体を専用の吸盤でつまみ上げて顕微鏡でのぞき込み、刻印された企業ロゴやシリアル番号などに不自然な部分がないか確認する。X線検査装置で内部の配線パターンも調べ、正規品と見比べる。

 検査した半導体の約3割は、10年以上前に生産された旧型や廃家電から抜き取った中古品など、いわゆる「粗悪品」と判明。中には、外観だけ整えて内部が空だったり、大手メーカーのロゴを勝手に使ったりした「偽物」も多いという。

 偽物や粗悪品は以前から流通しているが、半導体不足が強まるにつれて急速に顕在化し始めた。中国や韓国、東南アジア製が中心とみられ、主にインターネットサイトで販売される。取引先のメーカーから注文を受けたものの、調達に窮した商社が手を出して納品するケースが多い。

 そのまま車のドライブレコーダーや美顔器、電子たばこに組み込んで製品化され、消費者に販売後、初期不良で作動しない事例も出ている。まれに半導体から発火する恐れすらある。

 都内の家電量販店では、電話機やカメラ、プリンターなどの売り場で「取り寄せ中」の札が目立つ。各メーカーが半導体を調達できず、製品の減産に踏み切っているためだ。

 ホンダは8月上旬、鈴鹿製作所(三重県)の完成車生産を5日間停止し、日産自動車は電気自動車(EV)の新型車アリアの発売を「今年半ば」から「今冬」に延期。主要国で消費がいち早く回復した中国では、半導体不足で売る新車が足りず、6月の販売台数は前年同月比12・4%減少した。

 自動車や家電の減産は、鉄鋼や非鉄金属など素材産業にも影響する。内閣府が7日に発表した5月の景気動向指数(CI、2015年=100)は、景気の現状を示す一致指数が前月より2・6ポイント低い92・7と、3か月ぶりに下落した。

 半導体は、コロナ禍での在宅勤務に伴いパソコン向けの需要が拡大し、昨秋以降は北米などの新車販売が急回復して「各業界による争奪戦」の様相となる。今年3月、半導体大手ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県)で火災が発生して完全復旧までに約4か月間を要し、国内外での不足に追い打ちをかけた。

 半導体自体を増産しようとしても、工場の新設を決めてから生産を始めるまでに1年前後はかかる。生産工程は数百に上り、発注から納品までにさらに数か月を要する。調査会社オムディアの杉山和弘氏は、「半導体大手の一部は22年まで注文が埋まっており、増産の余地は少ない。不足が解消されるのは22年秋以降だろう」と話している。

 幅広い製品の心臓部である半導体は「産業のコメ」とも称され、米中両国などは経済安全保障の観点から関連する企業や技術の囲い込みを強めている。

 中国は2020年12月、輸出管理法を施行し、サイバーセキュリティー関連の半導体製品の輸出規制に乗り出した。中国は尖閣諸島を巡る緊張が高まった10年、レアアースの対日輸出規制に踏み切った。半導体でも、安定供給を「人質」にして外交圧力を高める恐れがある。

 これに対し、米政府は、半導体の国内生産を拡大する方針にかじを切り、今年6月には製造・研究開発支援に500億ドル(約5・5兆円)以上を投じる計画を公表。西部アリゾナ州では、米インテルや半導体受託製造大手・台湾積体電路製造(TSMC)などが数兆円規模の投資を行う。

 欧州や台湾、韓国も、域内や自国内で生産や技術開発を進める企業への支援策を相次いで打ち出し、輸入品への過度な依存を避けようと動いている。

 日本も、経済産業省が今年6月に「半導体・デジタル産業戦略」をまとめ、政府主導で育成を図る姿勢を示している。米国や台湾の企業と連携して国内生産を拡大する方針で、TSMCは2月、研究開発拠点を茨城県つくば市に設けることを決めた。

 ただ、TSMCは日本国内での供給拡大につながる巨額投資には依然、慎重姿勢とみられる。米中に対抗できる生産体制を国内に整えるには、政府による数兆円単位の支出が必要との見方もある。

 日本は高度成長期以降、電機大手各社による半導体への集中投資が奏功し、1988年の世界占有率(シェア)は50%超に達した。バブル崩壊後に韓国・台湾企業に押され、再編や 淘汰とうた を繰り返した結果、2019年のシェアは10%まで低下している。

 (経済部 向山拓)

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