テレビ首脳会議後に記者会見するフォンデアライエン欧州委員長（23日、ブリュッセルのEU本部）=AP
【ブリュッセル=竹内康雄】新型コロナウイルスの感染拡大への対応を巡って欧州連合（EU）加盟国の足並みが乱れている。23日に開いた首脳によるテレビ会議では、新型コロナの感染が収束した後の経済対策について復興基金を設けることで合意したものの、規模や財源の結論は持ち越した。感染が多いイタリアやスペインなど南欧は財政に不安を抱え、債務危機の再燃リスクを払拭するためにも結束が試されている。
「（支援は）融資を通じて実施されるべきだ」「ユーロ共同債は受け入れられない」。23日、オーストリアのクルツ首相は、テレビ会議終了直後にツイッターにこんな投稿をした。一方、フランスのマクロン大統領は「重要なのは（基金が）共同で保証された債務によってまかなわれることだ」と主張。返済義務のある融資でなく、補助金であるべきだとも訴えた。
テレビ首脳会議に臨むマクロン仏大統領（23日、パリ）=ロイター
復興基金は、EU加盟国が徐々に店舗の営業規制などの緩和に踏み出す中、経済への影響を最小限に抑える狙いで設置が決まった。ただ基金の具体的な内容では、財政規律を重視するオーストリアやオランダなど「倹約4カ国」にドイツを加えた北部欧州と、フランスの後ろ盾を持つイタリアやスペインなど南欧諸国が対立する。
基金の規模は1兆～2兆ユーロ（約116兆～230兆円）の案が浮上する。メルケル独首相が「十分な貢献をする準備がある」と語るなど北部欧州にも一定の規模は必要との理解はある。
しかし財源と使い方では激しい対立が続く。仏伊などはユーロ圏が共同で債券を発行して財源を調達すべきだと主張するが、北部欧州は反対する。共同債は財政に余裕がある北部欧州の高い信用力を裏付けに発行されるため、北部欧州による南欧の借金の肩代わりにも映る。安易に認めれば自国民の反発につながりかねないとの警戒は強い。
テレビを通じてEU首脳らと協議するオーストリアのクルツ首相（23日、ウィーン）=ロイター
基金の使い方では返済する必要がある融資か、必要がない補助金にするかで割れる。北部欧州はEUの財政規律を守るには返済されるべきだと考えるが、南欧側には融資では借金がさらに積み上がり、財政に対する金融市場の不安を招きかねないとの思いがある。
EUのフォンデアライエン欧州委員長は5月上旬にも概要を示す。融資と補助金の折衷案を模索しているもようだが、各国の同意を得られるかどうかは不透明だ。欧州メディアによると、イタリアのコンテ首相は会議中、各国首脳に歩み寄りを訴えた。「健康の非常事態は経済・社会の非常事態になった。だが我々は今、政治的な非常事態に直面している」
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April 25, 2020 at 09:00PM
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欧州財政協調、溝深く 復興基金 財源・規模など対立 - 日本経済新聞
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