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Saturday, April 4, 2020

「知の巨人たち」の個人アーカイブスを残す意味 - 日本経済新聞

梅棹資料室には、著作や寄稿、ノートなど膨大な資料が保管されている(大阪府吹田市の国立民族学博物館)

梅棹資料室には、著作や寄稿、ノートなど膨大な資料が保管されている(大阪府吹田市の国立民族学博物館)

国立民族学博物館(大阪府吹田市)で初代館長、梅棹忠夫氏の生誕100年を記念する「知的生産のフロンティア」展が企画されている。アジア・アフリカの地域研究、情報論、比較文明論、文化学術行政など幅広い領域で活躍した同氏に関係する膨大な資料は順次デジタル化、データベース化が進められてきた。それらを活用し「知の巨人」の思考の過程に触れる機会を提供しようという試みだ。

梅棹氏は書籍のほか、ノート、アイデアを記したカード類、著作のもとになった情報を入れたファイル、写真、「引紹批言録(いんしょうひげんろく)」と称した自身の論考の引用・紹介・批評・言及の記録など多彩な資料を残した。

企画展では、これらの実物を展示するほか、入館者が端末を操作して興味のあるものを探っていくと、閲覧できる関連資料が次々に出てくる仕組みを構築。一見関係のなさそうなものが梅棹氏の中では密接に結びついていたり、比較してアイデアを出していたりした過程がわかるようにした。

「AIを使っているので、我々が思いもかけなかったものが関連づけられて浮かび上がるかもしれない。梅棹さんの頭の中、知的生産の過程をのぞいてみる試みとも言えます」。企画した飯田卓・民博教授は語る。

こうした企画展が可能なのは、手書きの文書など膨大な資料が「梅棹忠夫アーカイブス」として保存・整理されてきたためだ。

東京女子大の丸山真男文庫は、個人アーカイブスの活用で先駆的な活動をしてきた。日本の政治・思想史研究で大きな足跡を残した丸山氏所蔵の書籍、草稿類の寄贈を受け、それらを詳細に整理。書き込みのある書籍や自筆のノート、思索メモなどはデジタル画像にし、ネット上で閲覧できるようになっている。

資料整理で確認された未発表作品が刊行されたほか、同大の丸山真男記念比較思想研究センターが2004年度から毎年、丸山氏に関する研究会の活動などの報告書を出している。1996年に亡くなって20年以上たつが、近年もアーカイブの利用で注などを充実させた既刊本の文庫化、研究者による丸山氏関連の著書の刊行が相次いでいる。

資料を保存するだけでなく、いかに活用するかが個人アーカイブの課題だ。評論家の加藤周一氏の著書や書簡の寄贈を受けた立命館大は一部をデジタル画像にし、文字検索ができる形でデータベース化している。同大加藤周一現代思想研究センターの鷲巣力センター長は「手間はかかるが、利用しやすくなる」と話す。

知識人の蔵書や文書を集めた個人文庫は、施設や人、資金の問題から生まれにくくなっている。ごく一部とはいえ、「知の巨人」と称された人の思考の全体像に接近できる個人アーカイブスは貴重な存在だ。その数の蓄積と質は、その国の知の底力を示すと言えるかもしれない。(堀田昇吾)

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