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Thursday, March 19, 2020

原油安 産油国の財政に打撃 - 日本経済新聞

サウジアラビアのムハンマド皇太子=ロイター

サウジアラビアのムハンマド皇太子=ロイター

【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビアが引き金を引いた石油市場の価格戦争は、ほとんどの産油国の歳入を減らし、財政を悪化させそうだ。米ドルにペッグ(固定)した通貨に売り圧力が増し、債券市場などを通じた借り入れコストもふくらむ。中東やアフリカの産油国が「脱石油」の改革を進めることはさらにむずかしい環境になる。

国際指標の北海ブレント先物は足元で1バレル25ドル程度。1月のピークの半値以下で、各国の財政均衡に必要な損益分岐点を大きく下回る。国際通貨基金(IMF)の試算では2020年の損益分岐価格はサウジアラビア83.6ドル、アラブ首長国連邦(UAE)70ドル、オマーン87.6ドルなどとなっている。

協調減産の崩壊の引き金を引いたサウジ自身も収入減少の打撃をうける。国営石油会社サウジアラムコは供給の蛇口を目いっぱいゆるめたが、それでも増産量(27%)より、40%以上下落した価格のインパクトのほうが大きい。財政赤字は20年に国内総生産(GDP)の10%程度にふくらみ、原油安が続けばさらに悪化するとみられる。

通貨の先物市場では米ドルにペッグする産油国の通貨に売り圧力が増している。財政健全化が進まなかった国は、ペッグ制を支えるための十分な外貨準備が足りない。通貨切り下げは、物価上昇などを通じて経済の混乱を引き起こしかねない。

中東の有力投資銀行EFGエルメスのエコノミスト、モハメド・アブバシャ氏は「オマーンとバーレーンの通貨が湾岸で最も大きなリスクにさらされている」と指摘する。オマーン通貨の1年先の対ドルの外国為替契約は一時、過去最安の水準をつけた。

過去に複数の通貨切り下げを経験したナイジェリアは輸出の9割を石油に依存する。通貨ナイラの実質レートは現在1ドル=370ナイラだが、1年後の先物取引の相場は一時1ドル=450ナイラ程度となった。

ペッグ制や財政の行方への不安は国債発行による資金の借り入れコストをふくらませる。欧米の格付け会社による格下げの動きがひろがったオマーンの10年物国債の利回りは、一時5ポイント以上も上昇し10%を超えた。新型コロナウイルスの感染拡大により、投資家はリスクが高い資産から資金をひきあげている。

サウジを筆頭に産油国は石油にたよらない改革を進める。人口増で国家丸抱えの仕組みが限界をむかえたうえ、消費国の化石燃料離れが加速しているからだ。産業の多角化を進めるには労働者の訓練や教育への投資、インフラ整備などで多額の資金が必要となる。増税など不人気な緊縮策を打ち出せば、国民の改革への支持を失いかねない。

サウジのムハンマド皇太子が切望するアラムコの海外市場での新規株式公開(IPO)は一段とむずかしくなっている。皇太子はアラムコの企業価値を2兆ドルと主張してきたが、原油安で株価も低迷し、足元の時価総額は1兆6千億ドル程度だ。市場環境を無視したかのようなアラムコの強引な生産政策の変更で、潜在的な投資家は少数株主の発言権をめぐる不安を強めた可能性がある。

一方、サウジとのシェア争いに突入したロシアの通貨ルーブル下落は、ロシアの石油生産コストを引き下げる効果がある。サウジとロシアが協調減産にもどるための対話の兆しは見えない。

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