日本経済が原油価格高騰と円安というダブルパンチに見舞われている。今回の円安にはドル高という要因に加え、日本売りというニュアンスが含まれており、日本経済にとってポジティブであるとは限らない。これまで日本経済は良くも悪くも物価が低位安定してきたが、いよいよその時代が終わろうとしている。(加谷 珪一:経済評論家) ■ 物価が上がる材料が揃っている 原油価格がこれまでにない高騰を見せており、1年前には40ドル前後だった先物価格はすでに80ドルを突破した。一部の市場関係者からは100ドル突破も近いとの声も聞こえてくる。原油価格が上昇している直接的な原因は、コロナ終息後の景気回復期待から需要が急拡大したことだが、それだけが理由ではない。 コロナ後の社会では急ピッチで脱炭素シフトが進むと予想されており、長期的に石油の需要は消滅していく。もし2050年までにカーボンニュートラルが実現する場合、10年後の石油需要は10%、20年後には20%以上の減少が見込まれている。産油国にとっては、消え行く資産である油田に積極投資を行い、生産を拡大するというインセンティブは働きにくい。現状の油田から得られる利益を最大化するため、需要が拡大している現状においては、価格を高めに誘導したいとの思惑がある。 とはいえ、今回の価格高騰の直接的な原因は需要過多なので、石油以外の資源・資材の価格も上昇している。加えて原油価格の高騰による輸送費の高騰やコロナ危機をきっかけとしたサプライチェーンの混乱も生じており、あらゆる分野でコストが上昇している。さらに言えば、先進各国はリーマンショック以降、量的緩和策を実施しており、市場には大量のマネーが供給されている。市場にバラ撒かれたマネーの回収(つまり金融政策の正常化)はこれからなので、金融面でも物価が上がりやすい環境が整っている。
全世界的に多くのモノやサービスの価格が一斉に上がっているという点においては、1970年代に発生したオイルショック以来の出来事といってよい。 経済学の基本として、理由の如何を問わず、市場に対して経済成長のスピードを超えて大量のマネーを供給すれば、最終的にはインフレ圧力に転じる。また世界経済全体を見渡せば、新興国の生活水準の向上でエネルギーや資材、食糧の消費が増えることは確実であり、それに対して十分な供給体制は構築されていない。物価が上がる材料は十分に揃っていたので、見えにくかったインフレ圧力が、コロナ危機をきっかけに顕在化したと考えた方が自然だろう。 ■ 輸出競争力の低下で交易条件が悪化 インフレが全世界的に進んだ場合、各国はそれなりの影響を受けるが、米国のような消費大国で基軸通貨を持つ国は、それほど大きな影響は受けない。輸入物価が上昇した分だけ企業は製品価格に転嫁すればよく、国内の物価が上昇すると同時に、賃金も上がっていくので、労働者の実質的な可処分所得はそれほど大きくは変わらない。 一方、ドイツのような高付加価値な輸出大国も日本と比較すると影響は少ない。ドイツは日本と同じように原材料や部材を輸入して製品を輸出する典型的な加工貿易だが、付加価値が高い製品が多く、輸入に占める原材料の比率が低い。だが日本は同じ加工貿易でも、原材料を輸入する比率が高く、資源価格高騰の影響をモロに受けてしまう。また付加価値が低い製品の場合、価格が主な競争力の源泉となるので、原材料費が高騰したからといって一方的に価格を上げることは難しい。
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