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Wednesday, June 2, 2021

新型コロナ禍、経済理論と実践に構造的転換もたらす-財政政策に比重 - ブルームバーグ

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経済運営の在り方を巡る考えがいったん定着すると、それから脱却するには数世代かかることもある。従来の政策を別の路線に切り替えるには通常、何か大きな出来事が契機となる。例えば新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のように。

  パンデミックに見舞われ、世界中がロックダウン(都市封鎖)を余儀なくされた2020年、各国・地域の当局者はためらうことなく積極的な経済対策を講じた。米経済の場合は特に、早急な財政出動を通じて、ほぼ誰も予想しなかったペースで過去最大級とも言える深刻な落ち込みから抜け出し、好況に向かおうとしている。

  その結果、経済学の理論と実践には構造的な転換が生じるかもしれない。 

Bloomberg Markets

ブルームバーグ・マーケッツ誌6月・7月号

  2008年の金融危機とそれに伴うグレートリセッション(大不況)は、既に経済理論再考の引き金となっていた。しかし、1980年代に当時のレーガン政権とボルカー連邦準備制度理事会(FRB)議長がかじ取りに当たった経済政策運営の枠組みはその後も結局、比較的無傷のままだった。

  その手法を大まかに言えば、インフレ抑制とともに、財政政策ではなく金融政策によって経済成長のペースを調整することを優先するものだった。

  だが新型コロナ禍は、世界中でこうした既存のアプローチからの刷新を図る動きをもたらした。新たな経済理論では、金融政策に代わって財政政策が経済運営で中心的な役割を果たす。

  政府が各世帯や企業に直接資金を給付し、過去最大規模の財政赤字を計上する一方、中央銀行は増発される国債などの購入や低金利維持、さらには、今はインフレを心配する時ではないと強調するといった2次的かつ支援的な役割を演じる。

  政策当局はまた、マクロの観点からもっと視野を広げ、所得分配や職業別就業状況、誰が最も支援を必要としているかを示すデータにも着目し始めた。

新型コロナ禍で変わる経済理論と実践

Source: Bloomberg)

  米国を含む各国・地域の中銀や財務省などでは、1970年代の狂乱物価とその影響について多少の記憶がある人々が多くの重要ポストにあるが、そのスタッフには先進国における高インフレを経験したことのないもっと若い世代のエコノミストの数も増えつつある。

  こうした若手のエコノミストは、完全雇用の実現や所得・富の分配の公平化といった社会的優先課題を犠牲にしてまでインフレ抑制だけに専念することには反対であり、経済政策上で「最大の敵」はインフレよりも不平等であると見なす公算が大きい。

Pick Your Problem

  バイデン政権は格差是正のための財政政策を打ち出し、新たな経済理論の実践に乗り出している。70年代以降、人気を失っていた富裕層増税や貧困層向け支出拡大をバイデン大統領は推進しようとしている。

  2008年の金融危機の際と比べ、新型コロナ禍からの米景気回復の速度はずっと速く、米国ほどではないものの他の先進国の立ち直りも前回のリセッション時より急ピッチだ。今回の成果によって、新たな政策課題が生じつつある。それは、景気低迷からの脱却の方法を学んだ今、これからどのようにブームに対処していくべきか、答えを見つけるプロセスとなる。

原題: The Covid Trauma Has Changed Economics - Maybe Forever(抜粋)

(原文はブルームバーグ・マーケッツ誌6月・7月号に掲載)

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