米ウォール街の最も強気な経済見通しは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)があたかも過去の話であるかのように、誰もがすぐに地元のジムやバー、ヨガ教室に戻るというシンプルな予測にかかっている。
ソフトウエア開発や外食チェーンなど、米国で最大の雇用者を抱えるサービス産業での雇用の急拡大が今年の成長への楽観論の中核を占める。
新型コロナワクチン接種が進み免疫獲得が広がることで累積需要が解き放たれ、失業者の大幅な減少につながる採用の流れを喚起するという論理だ。失業率について、米連邦準備制度は年末までに5%、ゴールドマン・サックス・グループやドイツ銀行など民間金融機関の一部は4%レンジへの低下をそれぞれ見込んでいる。
米労働省は5日に2月の雇用統計を発表する。ブルームバーグ調査では、失業率は1月の6.3%から6.4%に上昇が見込まれている。新規感染者数の拡大が見られた昨年12月と今年1月はレジャーや接客、小売業などに弱い数字が集中した。サービス部門は現在1億2200万人程度が働いており、パンデミックが発生した昨年の早い時期に比べほぼ900万人減少している。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は先週、下院金融委員会でサービス部門の雇用の恒久的な喪失を懸念していると語った。「われわれが報告を受けた調査の一部を基にすると、自動化への切り替えに伴い、こうした雇用の全てが戻るわけではない状況が浮かび上がる」と指摘した。
パンデミックの間に導入された省力化技術は、雇用に関する楽観的な見通しに多くの不確実性が伴う理由の1つにすぎない。ワクチン接種が進展しても、消費者の慎重な姿勢がどの程度の期間続くかや、どれだけの中小企業が破綻しているのか、企業がより少ない従業員で需要を満たせると判断したのかどうかは、いずれも不明だ。
エバコアISIの政策エコノミスト、アーニー・テデスキ氏はサービス部門について、「現時点のデータでは状況がどのくらい早期に回復するのか判断できない」としながらも、楽観的になる理由はあるとして、ワクチン接種状況の改善で接客や小売業を中心とした立ち直りの可能性に言及。ただ同時に、中小企業の破綻を巡る統計には懸念を示した。
多くの中小企業を含む2万の顧客を持つ決済代行会社グラビティ・ペイメンツのダン・プリンス最高経営責任者(CEO)は「完全に廃業する企業の割合が50%増加した」と指摘。依然として事業を継続している企業でもパンデミックの長期化で雇用計画の策定は難しいと感じている。
ブルームバーグの米国担当シニアエコノミスト、イレーナ・シュルヤティエバ氏は、サービス部門の支出と雇用の回復は「国内総生産(GDP)伸び率が通常のペースに戻るために絶対必要だ」と話す。その上で、急回復論の最大の難点は人々が健康リスクをさっさと忘れるという仮定だとし、「力強い部分も幾分でてくるだろうが、コロナ危機前の行動パターンに戻るとは全く思えない」と語った。
原題: Want Fries With That Recovery? Why Services Are Key to Economy(抜粋)
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