
新型コロナウイルス感染症による景気の落ち込みから急回復させるべく、さまざまな財政支出が行われている。これについて、さらなる財政悪化を招くため、増税をセットにすべきだとの主張がなされている。しかし、これには根本的な問題があることを指摘しておきたい。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰) 【この記事の画像を見る】 ● 景気対策と増税のセットは正しいか 新型コロナ感染症対策として、巨額の財政支出がなされている。これはただでさえ悪化している日本の財政状況をさらに悪化させ、国債の信用を危機に陥らせるもので、金利の急騰を招きかねない。したがって、現在、財政拡大を行うなら、必ずその支出増を後から増税でまかなうべきだという議論がある。 実際、2011年の東日本大震災に関しては、復興特別税として、所得税、住民税、法人税に上乗せし、10.5兆円の復興支出を賄うことが決められている。うち、所得税については、所得税の2.1%分の増税が2013年度から25年にわたって徴収されている。 しかし、この議論には3つの点で疑問がある。第1に、増税されると分かっているのなら、人々は将来の増税のために貯金し、支出をしなくなる。すなわち、近い将来増税すると言っては、肝心の景気刺激効果が薄れてしまう。第2は、景気対策で財政は悪化しない。悪化するのは不況のためだからである。第3は、支出に応じて増税するという議論は、かえって支出の中身を精査する議論を遠ざけてしまう危険性がある。 次ページから、この3つの論点を詳しく解説していきたい。
● 1.増税を予想した人々は支出を拡大しない 「近い将来の増税を予想した人々は支出を拡大しないというのは極端だ。特に、今回のコロナ不況対策は、急に所得が減少してどうしようもなくなってしまった人々への援助なのだから、将来の増税に備えて貯蓄するなどということはあり得ない」 こう考える人が多いだろう。 だが少数であれ、将来の増税を意識して支出を拡大せず、貯蓄する人もいるはずだ。 わざわざ将来の増税をセットにして、景気刺激効果を削減する必要があるだろうか。もし景気刺激効果を小さくしたいなら、そもそも景気刺激対策の予算額を減らせばよいだけだ。これで財政赤字も減少し、目的を達することができる。 ● 2.景気対策で財政は悪化しない これはやや複雑な議論をしないといけない。 景気対策で財政は悪化しないとは、次のような意味である。財政支出を拡大すると、GDP(国内総生産)は増えるはずである。昔のケインズ主義者は、財政支出を1兆円増やせばGDPは3兆円ぐらい増えると主張していた。財政支出額とそれによって増加するGDPの比を乗数というが、乗数は3だというわけである。 しかし、乗数が3もあると考えている経済学者やエコノミストは、現在はいないだろう。ただそれでも、乗数が1ぐらいと考えている経済学者、エコノミストは多い。内閣府経済社会総合研究所の分析によると、公共投資の乗数は1.14である(「短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)の構造と乗数分析」『経済分析第190号』内閣府経済社会総合研究所、2016年1月)。 現在(2018年度)、一般政府の債務残高は1,240兆円、名目GDPは548兆円である。乗数が1として、10兆円の国債を発行して政府支出を10兆円増やすと、政府債務残高もGDPも10兆円増える。 この時、政府債務残高の対GDP比はこうだ。 【国債を発行して政府支出を増やす前】 政府債務残高対GDP比=1240兆円÷548兆円=226% 【国債を発行して政府支出を10兆円増やした後】 政府債務残高対GDP比=(1240兆円+10兆円)÷(548兆円+10兆円)=224% すなわち、景気刺激策によって政府債務残高対GDP比は低下する。
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July 06, 2020 at 08:05AM
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コロナ不況の景気対策が、日本の財政を悪化させない意外な理由(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース
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