<「トルコ軍に皆殺しにされるぐらいなら」と妥協に踏み切ったクルド人勢力。トランプの裏切り外交が生んだ悲劇だ>
シリア北東部でトルコの越境攻撃を受けているクルド人勢力が、トルコ撃退のためにシリアのバシャル・アサド大統領と、その後ろ盾のロシアと手を組んだ。ドナルド・トランプ米大統領が、ともにIS(自称イスラム国)と戦ってきたクルド人を見捨てて駐留米軍を引き揚げると決めたからだ。怒ったクルド人がIS捕虜収容所の管理を放棄したため、少なくとも750人のIS戦闘員が逃亡したことも分かっており、トランプに対する批判の声が高まっている。
トランプは10月6日にシリア北東部からの米軍撤退を発表したが、クルド人勢力に対するトルコの軍事作戦を事実上容認したこの決定については、IS掃討で長年協力してきたクルド人勢力に対する裏切りだと非難の声が上がっていた。また数多くの専門家やアナリストが、米軍が撤退すればクルド人勢力はトルコに対抗するためアサドやロシアと手を組むしかなくなると警告していた。
その後トルコがシリアとの国境を超えてクルド人勢力に対する攻撃を開始すると、クルド人武装勢力「シリア民主軍(SDF)」はまさにそのとおりの行動に出た。アメリカに見捨てられ、皆殺しの目に遭う可能性に直面して、ほかに選択肢は残されていなかった。
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「クルド人虐殺よりはまし」
「アサドとロシアと手を組むという妥協な痛みの伴うものになる」と、SDFのマズローム・アブディ最高司令官は米フォーリン・ポリシー誌への寄稿で認める。「だがクルド人の虐殺を許すよりはましだ」
13日に結んだ合意の下、クルド人勢力はこれまで支配してきた国境近くの町、マンビジとコバニをシリア政府に引き渡す。一方、シリア国営メディアは、「トルコによるシリアの領土への侵略に立ち向かうため」にシリア軍が北部に向かっていると報じた。
シリア軍は北東部全域に展開される見通しで、北部を実効支配するクルド人組織、西クルディスタン移行期民政局(通称ロジャヴァ)も13日夜に発表した声明の中でこれを認めている。
「トルコによる攻撃を阻止・撃退するために、シリア政府と合意を結んだ。国境地域を守り、シリアの主権を守るために、シリア軍をトルコとの国境沿いに展開させる内容だ」とロジャヴァは声明で述べた。
さらに声明はこう続けた。「(シリア軍の配備は)シリア軍がトルコによる侵略に立ち向かい、トルコ軍と彼らが雇った外国人部隊が侵入した土地を解放するのを支援することが目的だ」
2019-10-15 06:50:00Z
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13184.php
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