
人は常に合理的な行動をとるとは限らず、時に説明のつかない行動に出るもの。そんな“ありのままの人間”が動かす経済や金融の実態を読み解くのが「行動経済学」だ。今起きている旬なニュースを切り取り、その背景や人々の心理を、行動経済学の第一人者である法政大学大学院教授・真壁昭夫氏が解説するシリーズ「行動経済学で読み解く金融市場の今」。第31回は、中国経済の先行き不安がもたらす日本経済への影響について分析する。
* * * 世界第2位の経済大国である中国が、いよいよ曲がり角を曲がったかもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大をいち早く抑え込み、景気回復に舵を切ったかに見えた中国だが、既に景気の減速が懸念されるどころか、失速が現実味を帯びてきた。
四半期ごとの実質GDP(国内総生産)成長率を見ても、今年7~9月期は前年同期比4.9%と4~6月期の同7.9%より落ち込み、10~12月期は3%台に落ち込む可能性もある。それでも、年間で見ればかろうじて8%台を維持すると見られるが、問題は来年以降だ。既に「来年の成長率は5%台に落ち込む」といった予測もあり、中国が雇用を確保するのに必要とされてきた「8%成長」は途絶える公算が高まっている。
先日、テレビ番組で共演した元駐中国大使の宮本雄二氏は、「中国は10年に一度くらいの間隔で政治と経済の重みが変わる。現在の習近平政権は政治を優先して経済を軽視する傾向がある。政治が口出しすることで経済の足を引っ張る」といったような発言をされていた。
かつて毛沢東時代は政治重視で経済を軽視し、「改革開放」に路線を転換したトウ小平時代は政治よりも経済に重きを置いたが、習近平政権は経済を犠牲にしてでも共産党支配を強化する姿勢を強めている。
その象徴と言えるのが、不動産大手の中国恒大集団の経営危機問題だろう。これまで国内景気の牽引役となってきた不動産バブルをここにきて潰しにきているのは明らかで、おそらく恒大集団はこの先、事実上の破綻に追い込まれる可能性が高い。
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