政府が経済安全保障の強化を議論する新たな会議体を今夏に設ける。米中の二大国による覇権争いの「板挟み」となる事態を警戒。省庁を横断し、民間有識者も集めてオールジャパンで臨む体制を整備する。ただ民間企業の二大国への依存度は高く、切っても切れない関係だ。日本経済への影響を抑えつつ、有効な対応策を打ち出すのは容易ではない。
「国際経済戦略の基本的な考え方を検討すべきではないか」。14日に官邸で開かれた経済財政諮問会議で、民間議員を務めるサントリーホールディングス社長の新浪剛史氏が菅義偉首相に訴えた。念頭に置いたのは米中対立で、二大国に挟まれた日本が経済安全保障で取るべき進路を議論する場を設けるよう求めた。
政府は昨春、外交・安全保障政策の調整機能を担う国家安全保障局(NSS)に経済班を設立した。各省庁にまたがる経済安保政策の立案を一本化するのが目的だ。だが人工知能(AI)など先端技術研究の分野では、経済産業省や文部科学省など担当省庁ごとに議論が分かれる傾向がなお強い。
研究開発の現場を抱え、機微な情報を多く持つ企業や学術界との議論の場も少ない。経済同友会は今年4月、経済安保をテーマにした提言を公表。企業に対し「新たな国際秩序が構築される非常時」と警鐘を鳴らし、政府には「官民の深い議論」を求めた。
官民一体の議論が進まない日本を尻目に、米国は中国を「唯一の競争相手」と位置付け、強硬姿勢を強める。経済分野では先端技術の対中輸出を制限し、第5世代(5G)移動通信システムの整備では中国系企業を排除。デジタル化の中核となる半導体では、世界生産で優位にある台湾との連携を強め、日本にも対中包囲網への協力を求める。
一方、中国も米国に対抗し、先端技術の対外輸出を規制する法制度を整備した。半導体は国産化を進め、レアアース(希土類)など鉱物資源の輸出厳格化も進める。
対立の先鋭化に経済界は苦悩を深める。米国は安保・経済両面で関係が深い一方で、中国は最大の貿易相手国でもあるためだ。原材料の調達を中国に依存したり、中国市場で事業展開したりしている日本企業は多い。財界幹部は「米中の間で企業がいかにうまく立ち回るかが重要だ」と本音を明かし、新会議の議論についても「玉虫色にならざるを得ない」と話す。
経済安全保障 国の経済発展や国民生活の安定を確保するため、他国などからの脅威を排除すること。気候変動などの分野における国際的なルール作りへの対応、ハイテク産業に不可欠な半導体やレアアース(希土類)のサプライチェーン(供給網)の強靱化、個人情報を取り扱う企業による国境をまたいだデータ管理の在り方といった幅広い課題がある。
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