「20世紀最高の経済学書」の何がすごいのか
大恐慌時代に生み出されたケインズの経済書が、歴史的名著とされる理由(写真:Sergey Nivens/PIXTA)
「20世紀における最高の経済学書」とも言われるケインズの『雇用、利子、お金の一般理論』の入門書『超訳 ケインズ「一般理論」』がこのたび刊行された。
とくに経済危機の到来が叫ばれる昨今、真に読むべき経済書として取り上げられる名著ではあるが、難読でも知られていた。それが的確かつ絶妙な訳出により、気軽に読み始められるものとなっている。
経済学を学ぶ者以外であっても一度は読むべき歴史的名著と言われるゆえんと、そしていまこそ読むべき理由を探っていく。
「不況の研究」が生み出した普遍的な経済理論
20世紀における最高の経済学書といってまず真っ先に挙げられるタイトルは、『雇用、利子、お金の一般理論』(ジョン・メイナード・ケインズ著)ではないだろうか。
1929年のNY市場の株価大暴落から始まり、世界中に不況が広がったいわゆる「大恐慌時代」の最中に刊行(1936年)されたこの本は、当時の経済学者たちがなすすべなく気色を失うなか、暗闇に差した一筋の光だった。
人間社会の崩壊寸前。そう言っても過言ではないほど1930年代の大恐慌による経済的破綻は大げさでなく悲惨であり、最終的にはその後の第2次世界大戦を招くことにもなるのだが、一編の論考がその崖っぷちからかろうじて人類を救うことになる。
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