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Monday, March 8, 2021

今年の米国、世界経済回復のけん引役に - Wall Street Journal

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 米国は今年、世界経済の力強い回復のけん引役をつとめる可能性がある。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるショックの特殊な性格と、米経済の柔軟性を背景に、今回は米国が金融危機後の回復期よりも中心的役割を果たすからだ。

 調査会社オックスフォード・エコノミクスによると、今年の世界経済の成長率は、ほぼ50年ぶりの高さである6%前後になるとみられている。これは、ワクチン普及の動きが進んで新型コロナのパンデミック(世界的大流行)下の規制が解除できるようになり、経済活動が急回復するためだ。

 同社によれば、今年の米経済は2005年以降で初めて、世界の成長に中国以上の貢献をするとみられている。2008年の金融危機後に世界経済の回復を支えたのは中国だった。この時の米経済の回復が、大恐慌からの回復以来で最も弱いものだったためだ。

 米国の経済規模は、中国よりも3分の1ほど大きいため、現在の予想通りに両国の今年の成長率がほぼ同じになれば、世界経済の成長に対する米国の寄与度は中国より大きくなる。

 シティバンクのグローバル主任エコノミスト、キャサリン・マン氏は「2021年の米国は、再び世界経済の機関車役を果たすことになるだろう」と予想している。ただし同氏は、国際情勢が米国の経済成長を抑制する要因になると付言した。

 ゴールドマン・サックスによれば、米経済は昨年3.5%縮小したが、今年は7%前後の成長率を記録するとみられている。同社によると、中国の経済成長率は昨年が2.3%で、今年は8%になる見込みだ。

 JPモルガン・チェースのエコノミストらは、今年の米経済の成長ペースについて、年央までにコロナ危機前のトレンドを上回ると予想する一方、中国経済については、既にパンデミック前と同様のトレンドを取り戻しているが、それを上回ることはないとみている。欧州と一部の新興国市場は、回復の遅れが来年まで続く見込みだ。

 コメルツバンクのチーフエコノミスト、ヨルグ・クレーマー氏によれば、今後何年かは、人口と生産性の低い伸びが中国の生産の重荷になるとみられる。中国政府の政策担当者らは、今年は景気刺激策を徐々に縮小するとともに、債務の抑制と不動産バブルの回避に力を注ぐと示唆している。

 米国経済の回復力は、新型コロナウイルスのワクチンの迅速な普及、予想される1兆9000億ドル(約207兆円)の経済対策、連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和と、積み上がった貯蓄を反映している。オックスフォード・エコノミクスによると、米国の家計の貯蓄超過は1兆8000億ドルに上る。

 一方、米国でも、その他の国でも、今回の景気後退に関しては、以前の経済危機と違い、資産バブルの破裂や累積債務といった特徴が見られない。エコノミストはこのことが回復を促進すると述べる。

 世界貿易は、パンデミックの間、人々が自宅にこもり、インターネットで商品を注文していたことから、既に危機前の水準を超えている。加えて、JPモルガンによれば、企業の設備投資は過去の2度の回復局面より迅速に回復している。政府からの寛大な支援が主な理由だ。

 JPモルガンによると、米国、ユーロ圏、英国と日本では、昨年のパンデミックの真っただ中に銀行の企業向け信用枠が年率80%で伸びていた。これは、信用枠が13%縮小した2009年の金融危機時と対照的だという。

 米国の力強い回復が市場に及ぼす影響によって、欧州や一部の新興国など、回復が遅れている地域が打撃を受ける可能性がある。投資家の信頼感の上昇は、米国や世界の借り入れコストを押し上げ、ドル高をもたらす。ドル高は、ドルで多額の借り入れを行っている政府の悩みの種になる。

 欧州中央銀行(ECB)の当局者は、債券利回りの上昇に警鐘を鳴らしている。ECB当局者は10~11日の2日間にわたって会合を開き、緊急対策を強化するか否かについて検討する。この中には、1兆8500億ユーロ(約240兆円)規模の債券購入プログラムも含まれる。

 欧州では新型コロナウイルスのワクチン普及が停滞しているほか、債務に関する懸念もあるため、政府は米国の規模に匹敵する新たな経済対策を検討していない。1月のユーロ圏の小売売上高は、多くの国でロックダウン(都市封鎖)が延長される中、前年同月比で6%以上減り、予想以上の落ち込みとなった。米国の小売売上高は同時期に7.4%増加した。

 ドイツでは、生産がほぼ危機前の水準に戻っているにもかかわらず、2月に一時帰休している製造部門スタッフの比率が7%以上に達した。これは、こうした労働者の一部が将来的に解雇される可能性があることを示す。

 フォークリフト・倉庫設備メーカーでフランクフルトに本拠を構えるキオン・グループは昨年、北米および欧州でのネットショッピングに対する力強い需要に支えられ、パンデミックにもかかわらず過去最大の受注を記録した。

 キオンの最高経営責任者(CEO)、ゴードン・リスケ氏は、「中国の鉱工業生産は以前の水準に回復しただけでなく、過去最高レベルのペースだ。経済システムに必要な資金を全て注入している北米も、それほど遅れていない。欧州は後れを取っている」と指摘した。

 リスケ氏によれば、米国で民主党主導の経済支援策が承認されれば、景気拡大が加速し、キオンは対応力の問題に直面する可能性がある。世界の投資家たちは、インフレが急激に加速するのを懸念し始めている。インフレは力強い成長とサプライチェーン(供給網)のボトルネック問題の結果として起きることがある。

 しかし、米国にとってさらに重荷となるリスクも存在する。世界経済の一部は他に比べて回復ペースが遅いか、あるいは全く回復しない可能性がある。観光業は欧州全体にとってだけでなく、アジアと米国にとっても重要な分野だが、国境規制が緩和されるまで回復しない公算が大きい。新たに出現し、一層感染力の高い変異ウイルスは、そうした規制措置の変更が何カ月も先になる可能性のあることを意味する。

 人々の行動が恒久的に変わってしまえば、一部の産業は不要になる可能性がある。人々がネットショッピングや自宅での仕事を続けることになれば、都市の中心部にある小売業は永久に姿を消してしまうかもしれない。

 ECBのアナリストは2月、パンデミックにより世界の経済生産はこれまでより低い水準に恒常的にとどまる可能性があると警告した。アナリストらによれば、経済界と政府は財務状態の回復に努める中で、研究・開発部門を含めた投資を減らす可能性がある。航空部門のような活動が停止した経済分野の資本ストックは時代遅れで不要のものとなるかもしれない。そして、ある分野のリソースを他の分野に移動させるにはコストがかかる。先進諸国では、労働者が働く意欲をなくしたり、世界的に移住者の動きが減少したりするのに伴い、労働力が縮小する可能性がある。広範囲にわたる学校の閉鎖は労働者のスキルを損なうかもしれない。

 元アイルランド中銀副総裁のステファン・ガーラック氏は、「歴史的にみて、景気後退は各国の成長ペースを恒常的に低下させる。そして今回についても同様となる公算が大きい」と指摘、「最後の1マイルは厳しいものになる」と述べた。

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