● 2021年の世界経済のキーワードは「K字型」 景気回復は二極分化する 昨年（2020年）11月以降、新型コロナウイルスの感染再拡大と、変異種ウイルスの発生によって、世界的に経済の停滞感がますます強まっている。 実体経済と比較すると、株式などの金融市場の動きはしっかりしている。ここへ来て、新型コロナのワクチンへの期待の盛り上がりもあり、世界的に株価が堅調な展開を示しているのである。その意味では、株式市場はワクチンへの期待が先行しているともいえるだろう。 このような実体経済と金融市場の乖離のほか、もう一つ気になる「乖離」がある。 特に、人々の移動＝動線を基本とする、飲食・宿泊・交通・サービス業などの「非製造業」部門の景況感の回復に遅れが出ている。その一方、人の動線にあまり関係のない、情報や通信、それに関連する「製造業」の回復テンポは、相応の堅調さを維持している。「非製造業」と「製造業」とで、景況感に明確な違いが出ているのだ。 急回復する「V字型」でも、ゆっくりと時間をかけて回復する「U字型」でも、回復できない「L字型」でもなく、回復の足取りがペースダウンしている「非製造業」と、明確な回復基調が続く「製造業」とが、あたかも「K」の字のように分岐・二極化している状況だ。
● 「製造業」の景況感は回復、 一方で「非製造業」の景況感は不安定 今後、成長が見込めるIT先端分野に強みを発揮できる国と、そうではない国の景気回復の勢い（モメンタム）には顕著な差が出るだろう。2021年の世界経済のキーワードの一つは、「K字型＝二極分化」ということができそうだ。 こうしたK字型の回復が進む状況下、先端分野における市場のシェアや競争力の高低、政権の安定感の有無などが、社会の活力や国際社会における各国の発言力を左右するだろう。 コロナショックを境に、世界経済の「製造業」と「非製造業」の景況感の強弱の違いが明確になっている。「IT後進国」であることが明確になったわが国にとって、景気回復にはかなりの時間がかかることが懸念される。 景気指標であるグローバルPMI（Purchasing Managers’ Index/購買担当者景気指数）の推移を確認すると（PMIの数値が50を上回ると改善、50を下回ると悪化と判断）、K字型回復の実体が実感できる。 昨年、2020年の年初以降、中国で新型コロナウイルスが発生し、世界に感染が拡大した。その結果、先進国でも新興国でも感染対策として人の移動が制限され、4月にかけて需要と供給のバランスが急速かつ大きく崩れた。 4月半ばを底に世界経済は底を打つが、情報や通信といった「製造業」よりも、飲食・宿泊・交通・サービス業などの「非製造業」のほうが景況感悪化の度合いは深刻だった。その一因として、ソーシャルディスタンス強化によって世界経済のDX（デジタルトランスフォーメーション）が加速し、半導体やサーバー、パソコンなどIT関連機器の需要が押し上げられ、関連する生産活動が急速に立ち直ったことがある。 7月にグローバルPMIの総合（コンポジット）指数は50台を回復。夏場まで、全体として製造業の企業は在庫調整を進めた。たとえば米国では設備投資がしっかりしている。それは、コロナショックによって人々が「何が本当に必要か」を明確に認識し、自動車、パソコン、空調、デジタル家電への需要が高まったことに支えられている。 その後、IT関連機器の需要や、自動車をはじめとする「ペントアップディマンド」（消費者の態度が遅れて表れること）の出現が製造業の景況感の回復を支え、製造業の景況感の改善のモメンタムは非製造業を上回るようになった。中国が公共事業などによって景気の回復をいち早く実現したことも、世界的な製造業の景況感改善をサポートしている。 その一方で、夏場以降の非製造業の景況感は50を上回ってはいるが、その動きが不安定だ。 10月以降は新型コロナの感染再拡大や変異種の発生によって、「製造業」における景況感の改善継続とは対照的に、飲食、宿泊、交通など「非製造業」の改善ペースは弱まった。ワクチンがない中での感染対策として人々が外出を控えるようになり、需要が低迷したからだ。特に日本や欧州では、当該業種の業況がかなり厳しい。
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