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Tuesday, July 21, 2020

新型コロナ:EU、財政統合へ一歩 復興基金合意で遠心力に歯止め - 日本経済新聞

EU首脳会議終了後に記者会見するフォンデアライエン欧州委員長(21日、ブリュッセル)=共同

EU首脳会議終了後に記者会見するフォンデアライエン欧州委員長(21日、ブリュッセル)=共同

欧州連合(EU)の首脳会議は21日、コロナ禍からの経済再生を図るため、7500億ユーロ(約92兆円)の復興基金を創設することで合意した。EUが借金して加盟国に配分する仕組みで、悲願だった財政統合に向けた一歩といえる。英国の離脱で逆回転した欧州統合はコロナ禍という危機がバネとなり、遠心力に歯止めがかかった。

足かけ5日、90時間あまりのマラソン会議の末の合意だった。「歴史的な日になった」。マクロン仏大統領がツイッターでつぶやくとメルケル独首相が応じた。「世界に素晴らしいメッセージを発することができた」

合意は財政政策でEUの権限が強まり、欧州統合を深めたことに意義がある。

復興資金に加え、2021~27年の通常予算を加えれば総額1.8兆ユーロもの巨額資金をEUが差配する。原資の一部はEUの欧州委員会が自ら債券を発行し、市場で調達する。これだけ大規模な「共通債」は初めてだ。

欧州は金融・通貨政策の一元化が先行し、財政や社会保障などの分野は遅れた。「未完の統合」が弱みだっただけに統合深化はごく小さくても欧州安定にプラスだ。

危機感が合意を後押しした。今年の実質成長率は域内平均でマイナス8.3%に沈むとEUは予想する。新型コロナが猛威をふるった伊仏スペインは特に厳しく、マイナス幅はいずれも10%を超える。合意を先送りすれば経済がさらに下振れし、南欧不安がぶりかえす恐れがあった。

コロナ対策で初動が鈍かったことへの反省もある。北イタリアで感染が広がった当初、多くの国が事態を静観した。「だれも手を差し伸べなかった。心から謝りたい」。そうフォンデアライエン欧州委員長は謝罪した。今回合意を逃せば、反EU機運に火が付きかねなかった。

EUの求心力が揺らぐ東欧や南欧では、中国やロシアが影響力を広げようと虎視眈々(たんたん)と狙う。そうした地域をつなぎ留める支援策であるともいえる。

財政再建に後ろ向きの南欧、カネを渋る北欧、民主主義を軽んじる東欧。首脳会議では、この3集団が角を突き合わせたから協議が長引いた。

オーストリアやオランダ、北欧など「倹約国」は多額の補助金を南欧に渡すことを最後まで渋った。「会議をどうでもいいと思っているんだ」。マクロン大統領がオーストリアのクルツ首相を罵った、と伝わる。

EU執行部や北欧から強権政治を批判された東欧も猛反発。「法治国家」を資金供与の条件にすることに抵抗した。

議長国ドイツが意識したのは自国優先主義が世界を覆うなかで「強い欧州」が「西側の価値観」の守り手として存在感を示すことだ。そのためにはなんとしてもEUの結束を保たねばならない。

財政拡大に慎重だったメルケル首相は議長国という立場上、「中立」の立場に軌道修正。フランスが提唱してきた「共通債」を容認し、倹約国や東欧の説得に回り、合意に道を開いた。

コロナ禍という「非常時」だからなんとか合意に持ち込んだEU。財政統合の布石は打ったが、各国の財政政策をEUに一元化する道筋が描けているわけではない。今回も共通債を「ユーロ共同債」と呼ぶのは避け、あくまでコロナ対策の期間限定だとする。

危機モードが消えても結束を保ち、財政統合を深めていくことができるのか。財政統合の道のりはまだ始まったばかりだ。

(欧州総局編集委員 赤川省吾、ブリュッセル=竹内康雄)

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