コロナ対策の補正予算が膨大な額に上っている。国会での十分な議論を経ないまま編成は進み、「財政民主主義」を脅かす状況だ。政府は税の使い方をめぐるずさんな姿勢を早急に改めるべきだ。
政府は観光や飲食業への消費支援策として第一次補正予算に一兆六千七百九十四億円を盛り込んだ。「Go To キャンペーン事業」と呼ばれる対策だ。
衆院国土交通委員会で批判が出たのは事務委託費が三千九十五億円と全体の18%に上っている点だ。赤羽一嘉国交相は使途について「(新たに設置する)事務局の業務や人件費など」と説明している。
だが事業に専門の事務局が必要なのか。事務作業にこれほどの予算がかかるのか。疑問は山積しており、この状況での予算執行は許されないはずだ。
中小企業や個人事業主救済のための持続化給付金でも新たな問題が出ている。一次補正で事務委託費七百六十九億円がつぎ込まれたが、二次補正で八百五十億円を追加する案が検討されている。
この委託費をめぐっては一般社団法人を通じた不透明ともいえる資金の流れが浮上している。給付の遅れはこれまでも指摘されてきたが、問題を放置したままでの予算追加は論外だろう。
二次補正では十兆円の予備費が計上された。予備費は「予見し難い予算の不足に充てる」として憲法で定められている。
予算の大半は国民から集めた税金が原資だ。使途については当然、国会での審議と議決が必要で「財政民主主義」の根幹を成す。
しかし緊急対応のための予備費は例外として政府が支出を決められる。東日本大震災の際は二兆円程度だった。その五倍に上り消費税4%分にも相当する予算を、政府が独断で使うという図式は許容できない。組み替えて大幅減額した上で改めて審議すべきだ。
大きな課題が起きると政府内では各省庁がさまざまな名目で関連予算を要求する傾向にある。中には必要性に疑問が残る予算も多く含まれ額は肥大化する。
人々が苦しむコロナ禍を予算獲得合戦の具にしてはならない。そのために最も必要なのは国会で議論を尽くすことだろう。
与野党を問わず国民の代表である議員は予算を精査し政府に問いただす義務がある。今、その機能が著しく低下しているのではないか。暮らしを守るための生きた国会審議を強く期待したい。
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