新型コロナウイルスの感染歴を調べる政府の抗体検査が今月、東京など三都府県で始まった。無症状の人の感染歴も分かるため、PCR検査に比べて感染の全体像が把握できるほか、経済活動再開の出口戦略の指標としても期待される。海外では、抗体を持つ人に「証明書」を発行する動きがある一方、検査の精度や抗体の有効期間などが不明確として、活用に慎重な意見も出ている。 (新型コロナウイルス取材班)
◆お墨付き
英政府は先月二十一日、全国で実施したサンプル調査の結果、ロンドンでは17%、全国平均では5%が陽性だったと発表。新たに一千万人分以上の検査キットを購入し、国民に大規模な検査を行うとした。
ハンコック保健相は「抗体がある人は将来の感染リスクが低くなる」と説明。経済再建を後押しするため、回復者に一定の活動再開のお墨付きを与える「抗体証明書」の導入を検討していることも明らかにした。
証明書の動きは中東経済の中心地からも。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイを拠点とするエミレーツ航空は四月中旬、搭乗前の乗客に抗体検査を始めた。世界の航空会社で初めてとみられる。その場で採血し、結果は十分で判明。陽性なら搭乗を拒否することもある。同航空は「検査結果の証明書が必要な国に向かう乗客にとって、利点がある」と強調する。
◆差別誘発?
一方、英国以外の欧州各国は、抗体検査を経済再開の指標にすることには慎重な意見が広がりつつある。
イタリアはこれまで十五万件を実施したが、目的は感染状況の把握のため。抗体を獲得した人に「免疫パスポート」を発行し、社会活動を認めることに前向きな自治体もあるが、賛否は分かれる。北部ロンバルディア州の医療機関の責任者は「再感染を防げる抗体の水準も、免疫の持続期間も不明だ」と、懸念を示す。フランスも抗体検査は主力のPCR検査の誤判定を補完する位置付けだ。
特定の抗体の有無を調べることへの倫理的な問題もある。科学誌ネイチャー(電子版)は五月二十一日付の論評で過去の感染症に言及し、仕事や結婚などで差別を引き起こす危険性を指摘した。五百万件の抗体検査を目指すドイツは一時、免疫パスポートを検討したが、激しい批判を受け中断。倫理委員会の見解を待つ考えを示した。
一方、あえて都市封鎖などの対策を取らず、人口の60%以上が抗体を得ることで感染拡大を防ぐ「集団免疫」を独自に模索してきたスウェーデン。保健当局は五月二十日、首都ストックホルムの抗体保有率が7・3%にとどまることを発表。集団免疫獲得の難しさが浮かび上がった。
◆第2波対策
感染者数が世界最多を更新し続ける米国は、抗体検査を今後の予防策を打ち出す判断材料として意義づける。米疾病対策センター(CDC)のレッドフィールド所長は「秋から冬に第二波が押し寄せた時、公衆衛生上の対策を取るためにも抗体検査は必要だ」と指摘。CDCは今月から一年半かけて、全米二十五都市で約三十万人分を調査する。
中国では、大規模な抗体検査の実施状況や結果は公表されておらず抗体検査の精度の低さを指摘する声がある一方、国際関係の研究者からは「中国は厳しい措置を実施してきたがゆえに、抗体を持たない人が多い可能性がある。集団免疫の獲得が欧州より遅くなる懸念もある」といった声も聞こえる。
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