
新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済への影響が甚大となっている。経済学者で早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏は、この問題が長期化すれば、企業の連鎖倒産が金融システム危機につながりかねないとし、財政制約にとらわれない政府の対応が急務だとの考えを示した。
ブルームバーグとのテレビ電話形式でのインタビューで野口氏は、「今、事業を継続するために必要なのはマネーだ」と指摘、それがないと連鎖倒産が起き、金融機関の資産が不良債権化する形で金融システムに波及する恐れがあると訴えた。
企業の資金繰りに一番有効なのは納税猶予だとし、減収要件を撤廃し、米英のように「全額無条件で認めるべきだ」と提言。企業への現金給付や協力金も長期化した場合の対応を考えるべきだと述べた。
政府は今月、コロナの影響で収入の減った事業者を対象に、税や社会保険料の1年猶予や最大200万円の現金給付を盛り込んだ事業規模108兆円の緊急経済対策を打ち出した。さらに政府が非常事態宣言を発令した7都府県が業種を指定した休業要請に踏み切ったことで、対象業種への休業補償を求める声が相次いでいる。
野口氏は「一番大事なのは接触を避けるために休業を要請し、通勤を抑制することだ」と述べた上で、休業要請に伴う補償に慎重姿勢を示す政府の対応について、「お金を出し渋っている」と指摘。「今は異常事態なので、普通の金融政策や財政政策の考えで対応してはいけない。財政制約があるからできないという考え方は間違っている」と述べた。
英政府が新型コロナ対策の資金確保で、イングランド銀行(中央銀行)から直接借り入れる貸付枠を拡張すると発表したことを踏まえ、日本政府も日本銀行に政府短期証券を引き受けさせる形で、市場金利に影響を与えず、いくらでも短期の資金繰りをつけられると主張した。
この短期資金供給の仕組みは、急きょ資金が必要になる為替介入や年度内の歳出入のタイミングのずれを埋める一時的な資金繰りの手段で、年度内に返済することが求められる。
大型の経済対策で、政府が目指す2025年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標の実現も危うくなっている。野口氏は足元の危機への対応と、「中長期に財政をバランスさせなければいけないのは別の話」と述べ、黒澤明監督の映画「7人の侍」で、野武士による略奪から村を守るため侍を雇うことへの不安を訴える農民に対して村おさが語ったセリフを引用し、「首が飛ぶかもしれないときに髭(ひげ)の心配をしてどうするのか」と苦言を呈した。
国際通貨基金(IMF)は14日、2020年の世界の国内総生産(GDP)見通しを3%減に下方修正し、「大規模ロックダウン(都市封鎖)」を受けて約100年で最も深刻なリセッション(景気後退)に陥ると予想。自粛要請ベースで感染防止に取り組んでいる日本のGDPは5.2%減と、主要7カ国(G7)の中で最も落ち込みが小さくなる見通し。
日本はG7諸国に比べて感染者や死者は少ない。ただ「納税猶予や給付申請の窓口がクラスターになる可能性が非常に高い」とし、早急に申請をオンライン化すべきだとの考えを示した。また在宅勤務は技術的に可能であり、推進のため「日本的な働き方から成果主義に転換しなければならない」とし、企業に変革を求めた。緊急事態宣言前の東京商工リサーチの 調査では、大企業の在宅勤務率は48%、中小企業は21%だった。
野口氏は東京大学工学部を1963年卒業後、大蔵省(現財務省)入省、72年米エール大で経済学博士号を取得し、一橋大学教授や東大教授、米スタンフォード大の客員教授を歴任。現在、一橋大名誉教授も兼任している。「超」整理法シリーズのほか、経済関連でも数多くのベストセラー本を出している。
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April 16, 2020 at 02:00PM
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異常時は財政制約放棄を、連鎖倒産が金融危機に波及も-野口悠紀雄氏 - ブルームバーグ
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