
統制強化のリスクが浮上
もう一つの問題は、石炭不足とその価格の高騰だ。中国では、危険で老朽化した炭鉱業界の状況を改善するため政府が鉱山の閉鎖を進めたことによって、供給が伸び悩み、石炭価格が高騰していた。 今年3月から8月までの国内石炭生産量は前年同期比で平均1.5%縮小した。そして国内の石炭供給がひっ迫しているところに、豪州やモンゴルからの輸入を政策として制限したことで事態が悪化したのである。これによって石炭価格は高騰した。中国商務省によると、発電用の石炭(一般炭)価格はこの半年に29%値上がりした。 他方で、中国の電力販売価格には規制が残っていることから、ここに逆ザヤが生まれ、収益悪化を恐れる発電所は、損失を避けるため生産を減らしたのである。 このように、深刻な電力不足問題は、政府の統制強化という政策が生み出した側面が強い。恒大経営危機の問題と同様である。「共同富裕」を掲げる習近平体制のもとで、統制強化はさらに進められるだろうが、今回の問題を受けて、スピードを緩めるといった形で多少なりとも軌道修正はなされるかもしれない。 海外は、中国政府の統制強化に伴う中国経済や中国投資のリスクを改めて認識させられたのではないか。他方、この問題をきっかけに、中国での地球温暖化対策が見直されることを、先進各国は恐れるのではないか。 (参考資料) “China’s Power Shortfalls Begin to Ripple Around the World“, Wall Street Journal, October 2, 2021 “China’s Coal and Gas Woes Might Test Beijing’s Principles“, Wall Street Journal, September 30, 2021 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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